等角写像で曲線群の直交が保存される
このワークシートはMath by Codeの一部です。
前回まで複素数を学んできた。
複素数の和差の線形性、積商の拡大相似という演算がもたらす性格が
複素関数、その微分・積分にまで影響していることを感じることができたのではないだろうか。
今回は複素関数のもつおもしろい性格を
俯瞰してみることにしよう。
等角写像だ。
等角は物理的・視覚的におもしろいからだ。
1.正則関数は等角写像
正則関数が等角写像であることを確かめたい。
1つは数式で、
2つめはコードによる視覚化で。
<曲線の交角>
曲線C1:z1=x(t)+i y(t)と曲線C2:z2=x(t)+i y(t)の交点z0での交角θzに対して、複素関数w=f(z)による像
曲線Γ1:w1=u(t)+i v(t)と曲線Γ2:w2=u(t)+i v(t) の交点w0での交角θwが等しいときfを等角写像という。これは、文字通りの等角写像の定義と言えるね。
では2曲線の交角をきめる数式とは?
正則条件は微分係数⊿w/⊿zという複素数が、z平面での進み方(傾き)⊿y/⊿xという複素数によらず、
一定数になることだったね。
・z0での微分係数は2つある。
C1からΓ1になるときは⊿w/⊿z=(w1-w0)/(z1-z0)
C2からΓ2になるときは⊿w/⊿z=(w2-w0)/(z2-z0)
この2つの極限が等しいので、(w1-w0)/(z1-z0)=(w2-w0)/(z2-z0)
(w1-w0)/(w2-w0)=(z1-z0)/(z2-z0)
これから角w1w0w2=角z1z0z2
だから、交点での接線が作る角度が不変になるから、等角写像になることがわかる。
つまり、正則関数は等角写像だ。
<直交曲線群>
ということは、
z平面上の直交曲線群C1sとC2sは、正則関数fでw平面の直交曲線群に移されるはずだ。
そこで、直交曲線群を具体的に作る実装につなげよう。
たとえば、
1.同心円群と原点通過の直線群
2.x軸y軸に平行な格子
3.線対称な放物線群
正則関数がこれらを等角に移すようすは、w=f(z)=z2などのべき関数とかで
カンタンに目でみてわかるようにできるはずだね。
(例)
1から1へ。
同心円群 l1: Sequence( x2+y2=r2, r, 1, 10)
複素数としては、|z|=r , z=r eiθ (0≦θ≦2π、r=1...10)だから、
その1つの円がzC=Curve(d cos(th), d sin(th), th,0,2π)d=1..10 (半径)
原点通過直線群 l2: Sequence( y=tan r , r, 0, 2π, 2π/16):
複素数としては、z=r ei k 2π/16 (θ=0...16, 0≦r≦5) だから、
その1つの直線がzL=Curve(r cos(2π/16 f), r sin(2π/16 f), r, -10,10) f=1..15 ( 傾き)
交点複素数z群 a=Sequence(Sequence( (r ; k),r,1,10),k,0,2π,2π/16)
w=f(z)=z^2=(x+yi)(x+yi)=(x2-y2)+2xy i
b(x,y)= (x2-y2), c(x,y)= 2xy
zCの変換先がwC=Curve( b(d cos(th), d sin(th)), c(d cos(th), d sin(th)), th,0,2π)
zLの変換先がwL=Curve( b(r cos(2π/16 f), r sin(2π/16 f)) ,c(r cos(2π/16 f), r sin(2π/16 f)), r, -10,10)
wCとwLは直交するね。
(円群と直線群)正則関数z^2による等角写像
(例)
2から3へ
2直線zL1:x=d、zL2:y=f
を写した先の2放物線wL1, wL2は直交するね。
(格子から放物線群)正則関数z^2による等角写像
2.等角写像と物理
<電荷と電位と電場>
万有引力の法則は
f=Gm1m2/r2
2つの質点に働く引力は2つの質量m1,m2に比例し、距離の2乗に反比例するというものだった。
クーロンの法則は
f=kq1q2/r2
2つの点に働く力は2つの電荷(電気量)q1,q2に比例し、距離の2乗に反比例する。
電気の場合は+-があるので、引力か斥力の2通りがある点はちがうけれど、
電荷というものは、イメージとしては、質量を電気おきかえたものといえるね。
電荷が真空の中で静止して作る電気の空間、電場のことを静電場といい、
時間の流れに関係ない状況でとらえることができる。
・重力によって空間に引力が働く重力の場ができるように、
電荷qによって空間に電気力が働く電場、電界Eができる。
イメージとしては、山が高いと、そこから噴き出す水は速くながれるが
山から遠くなると、噴き出す水は拡散して密度が低下して流れは遅くなる。
電位φという山の高さに対して、xy方向での偏微分gradφが勾配を表し、頂上以外では負の傾きになる。
だから、電気を流すベクトル場、電場Eは-をつけてE=-grad φとできるね。
・2回偏微分をしたΔ=∇2=∇・∇=(∂2/∂x2, ∂2/∂y2, ∂2/∂z2)をラプラシアンといった。
CRE(コーシー・リーマン方程式)Ux=Vy, Uy=-Vxをもう1回偏微分してみよう。
Uxx=Vyx=Vxy=-Uyyとなるね。だから、ラプラシアンΔU=Uxx+Uyy=0
電荷がないときの電位φのラプラシアンΔφ=0なので、
正則関数w=f(z)の実部U(x,y)か虚部V(x,y)が電荷がないときの電位φ(x,y)として使える。
<導体と等電位と電場ベクトルE>
金属のように電気をよく通すものを導体というね。
自由電荷が静止していると、導体の中の電位は一定で電場はない。
ということは、導体の中はラプラシアン=0になるね。
導体の表面は等電位になるから表面に対して、電場の向きは垂直になる。
つまり、等電位線は、等高線と垂直に水が流れるように、電気力線、電場Eが垂直に流れる。
等電位が面になっていても、面に対して電場ベクトルEは垂直になるね。
(例)
x軸y軸の正の部分が導体で、電荷がない第一象限の電位を考える。
w=f(z)=z2=(x2-y2)+2xy i 。V=2xy が電位とすると、V=k=2xy (k=1...10)が等電位線となり、双曲線。
これはw平面ではV=k(k=1...10)という、第1、第2象限に広がる。
双曲線に直交する曲線が電界、電気力線になる。
そのw平面での対応物はU=k(k=-10...10)という直線で、その中心がV軸の正の部分だ。
これはU=0だから、x2-y2=0 より、第1象限では、直線y=xだね。