無限サイズを計算しよう
このワークシートはMath by Codeの一部です。
前回は、無限集合の要素の個数を特に基数と呼ぶことがあること、
自然数の個数をℵ0(アレフゼロ)、実数の個数はℵ(アレフ)と名付け、
この2つの無限のレベルがちがうこと
を学びました。
今回は、無限の階層を調べたり、
個数、基数も数だから、数と数の演算がどうなるかを見ていきましょう。
1.無限の階段
・無限集合の大小
無限集合X,Yの基数|X|,|Y|の大小関係のルールでは、有限集合と同じものがあります。
写像f:X→Yが単射があると|X|≦|Y|で、さらに、|X|≠|Y|なら|X|<|Y|
このルールから恒等写像f(x)=xが単射だから、ℵ0≦ℵで、
さらに、対角線論法よりℵ0≠ℵだから、ℵ0<ℵだね。
・加算集合の連結
ℵ0の集合を∪でいくら連結した集合を作っても、その基数はℵ0のままです。
代数的でない数を超越数といいました。
だから、実数は、代数的数と超越数でできていますが、代数的数の基数はℵ0でした。
その残りの超越数が、実数の基数をℵにしているわけです。
だから、代数的数の隙間に超越数があるイメージがあるかもしれませんが、それは逆です。
超越数が実数の個数の大半を占めていて、代数的数が少しあるということですね。
<ベルンシュタインのはさみうち>
ベルンシュタインは基数の関係を明確化してくれました。
・はさみうちで同等
3つの集合 でXとZが同等なら、X,Y,Zはみな同等。
・ダブル単射で同等
2集合X,Yに双方向に単射があれば、XとYは同等。
(全射はyに逆に戻るxがあること、単射は別xは別yに行くことでした。)
(例)
開区間(0,1)から閉区間[0,1]へ、単射f(x)=xがあり、逆方向に単射g(x)=1/2x+1/3がある。
だから、開区間(0,1)から閉区間[0,1]は同等。
開区間(0,1)でtan(π(x-1/2))とすると、定義域は(-π/2, π/2)となり、値域は-∞から∞までの実数。
だから、1対1対応がつくから、開区間(0,1)は実数と同等。
X=開区間(0,1)、Y=閉区間[0,1]、Z=Rで、 で、XとRは対等だから、X,Y,Rはみな対等。
同じ論法で、半開区間(0,1],[0,1)も実数と同等といえますね。
この2つから次のような法則も作れます。
(ダブル≦で同等)2集合X,Yで双方向に≦ならば、XとYは同等。
(全射と単射で同等) 2集合X,Yで全射fと単射gがるとXとYは同等。
(ダブル全射で同等) 2集合X,Yに双方向に全射があれば、XとYは同等。
また、次の2つも大切です。
・推移律
基数A,B,Cの間にA≦B≦Cが成り立つと、A≦C
・3種律
2つの基数A,Bの間にはA<B,A=B,A>Bのどれかが成り立つ。
質問:開区間(0,1)と実数が同等であることをgeogebraで視覚化するにはどうしたらよいでしょう。
(0,1)を中心として原点を通る半円と(0,1)を通る直線y=mx+1をかきます。
mは開区間(0,1)の要素aに対してtan(πa)としましょう。
半円と直線の交点を介して、aはx軸全体に対応しますね。
写像と対応
開区間(0,1)とRは同等
・自然数と実数の間にある基数はあるか?
(答)
どちらともいえません。決めの問題です。
ℵ0とℵの間に中間の基数があるかどうか。
これはカントールが中間がないという予想を証明できませんでした。
今のところ、ℵ0の次がℵになるかどうかの問題は定理ではなく公理です。
ユークリッド幾何学の平行線定理のようなもので、定理ではなく公理だったという解決をみました。
他の公理に対して、中間の基数があるという公理は独立しているので、
どちらともいえないとするのが、連続体仮説です。
ゲーデルとコーエンが証明したといわれています。
・実数より大きいは基数あるか?
(答)
あります。実数値関数の集合の基数Fはℵより大です。
・実数より多い基数をどうやって作るか?
(答)
基数どうしの演算を調べることで、作れるようになります。それはこれから扱います。
2.基数のどうしの演算
無限大、∞という記号を高校でまなびます。
極限を伝えるためには、どうしても使うものです。
これは数値がいくらでも大きくなることをあらわしている無限です。
一方で、これまで扱ってきた無限は、集合のサイズの無限ですね。
だから、漢字で書くと同じ無限ですが、無限大と無限個は意味がちがうので注意が必要です。
基数はどんな法則が成り立つのでしょうか?
・加算濃度の場合
ℵ0+ℵ0=ℵ0
(例)
偶数の個数+奇数の個数=自然数の個数だから、2ℵ0=ℵ0。2をnにしても同じこと。nℵ0=ℵ0。
nをℵ0に伸ばしても、連結しているだけだから無限のレベルは変わらないね。
ℵ0×ℵ0=ℵ0
これは、2乗とみることができるから、n乗しても同様のはず。
ℵ0n=ℵ0(例)
有理数が自然数と同等の説明をするときに、分数表をつくったね。
そのとき、分子が列、分母が行とすると、分数の数はℵ0×ℵ0です。
分数は自然数と対等でしたから、ℵ0×ℵ0=ℵ0が成り立つね。
ℵ0×ℵ0=ℵ0
・連続体濃度の場合
ℵ+ℵ=ℵ
(例)
開区間(0,1)と半開区間[1,2)をあわせた開区間(0,2)は3つとも同等だ。2ℵ=ℵ。
区間を2個からn個にしても同じこと。nℵ=ℵ。nをℵに伸ばしても、連結しているだけだから
無限のレベルは変わらない。
ℵ×ℵ=ℵ
これは、2乗とみることができるから、n乗しても同様のはず。
ℵn=ℵ0
(例)
平面上の点の個数と直線上の点の個数は同等
・部分集合の濃度は、もとの集合の基数より大きい
3要素の集合の部分集合の個数は23>3
n要素の集合の部分集合の個数は2n>n
無限個でも同様にして、
ℵ0<2ℵ0=ℵ
ℵ<2ℵ=(R×Rの部分集合が関数で、その濃度)
これから、基数の数列が小さい順にできますね。 部分集合をとる操作を無限に繰り返すことができるとしたら、無限のサイズに終わりがないということですね。
この無限の操作は完結するという立場を、「選択公理」といいます。
選択公理からスタートすれば、基数の数列は無限に続くでしょう。
でも、ちょっとイメージがわきにくいですよね。
0,1,2,....., ℵ0, 2ℵ0=ℵ, 2ℵ=F , G=2F, H=2G ,.........
ただし、ℵ0が無限の基数の最小値で、これより下は有限サイズです。
・基数の演算法則
こうしてみると、正の数である基数a,b,cは一般の数とどうような法則が成り立つことがわかります。
イチゼロ a+0=a, a×0=0, a×1=a。
交換a+b=b+a、結合a+(b+c)=(a+b)+c、不等式の性質a≦bならa+c≦b+c。
交換a×b=b×a、結合a×(b×c)=(a×b)×c、不等式の性質a≦bならa×c≦b×c。
分配a×(b+c)=a×b+a×c。
指数法則 a b×a c=ab+c,(a^b)^c=a^(bc) ,(ab)^c=a^c ×b^c
・無限の無限乗
正の数である基数a,b,cについて、a≦bなら、ac≦bc
を認めると、ベルンシュタインのはさみうちで、さらに無限のべき乗をひろげられます。
nℵ0=ℵℵ0=ℵℵ=ℵ
(理由)
ℵℵℵ≦10ℵ0 どんな数も無限小数で表すことができるからです。
10ℵ0≦ℵℵ0=(2ℵ0)ℵ0=2ℵ0×ℵ0=2ℵ0=ℵ。だから、10ℵ0とℵは同等。同様にしてnℵ0=ℵ
ℵ=2ℵ0≦ℵ0ℵ0≦ℵℵ0=(2ℵ0)ℵ0=2ℵ0×ℵ0=2ℵ0=ℵ。だから、ℵとℵℵ0は同等
また、ℵℵ=(2ℵ0)ℵ=2ℵ0×ℵ=2ℵ=ℵ
3.合同分解で同等を構成する
無限基数の計算は、理屈で納得したり、証明できても
実感はわきにくいかもしれません。
そこで、同等な基数を視覚化するために、分解合同という操作に取り組んでみましょう。
<分解合同>
X=X1∪X2∪....∪XnにXを重なりなく分解でき、
Y=Y1∪Y2∪....∪YnにYを重なりなく分解でき、
XiとYiが合同ならば、XとYは分解合同だという。
(例)
線分E1=(0,1] と正方形E2=(0,1]×(0,1]は同等だ。
E1の点を表す小数をe=0.a1xa1ya2xa2ya3xa3y............とx用、y用に組み分けします。
各数字列は0でない1桁の数字か、0が1個以上連続して1桁の数字で終わるものとします。
eに対して、E2のx座標は0.a1xa2xa3x....、y座標は0.a1ya2ya3y....
とすると、単射です。この逆も単射になるので、対等です。