作図可能もガロアでいこう
1.1の原始n乗根
このワークシートはMath by Codeの一部です。
一般方程式は4次までは解の公式を作ることができました。
一般方程式は5次では解の公式ができません。つまり、代数的に非可解です。これは次回やりましょう。
今回は最も単純な方程式「XのN乗=数」、名付けてべき根型方程式からはじめて
正多角形の作図問題についてとりくみましょう。
その基本になるのは、xn−1=0だね。
特にnが5以上の場合でも解ける場合について調べてみましょう。
<1の原始n乗根>
n乗して初めて1になる数を1の原始n乗根といいます。
x2ー1=0ならば、x2-1=(x-1)(x+1)から、x+1=0。x=−1が原始2乗根。1個
x3ー1=0ならば、x2+x+1=0。x=(-1±√3i)/2=ω,ω2が原始3乗根。2個
x4ー1=0ならば、(x2-1)(x2+1)=0から、x2+1=0。x= ±i が原始4乗根。 2個
x5ー1=0ならば、x4+x3+x2+x+1=0。4個
x6ー1=0ならば、x5+x4+x3+x2+x+1=(x3+1)(x2+x+1)=(x-1)(x2-x+1)(x2+x+1)=0から、
x2-x+1=0の解。x=(1±√3i)/2=-ω2,-ωが原始6乗根。2個
x7ー1=0ならば、x6+x5+x4+x3+x2+x+1=0の解。6個
。。。。。
<1の原始n乗根の個数>
1のn乗根はz(n,k)=e^(2πk/n) k=0,1,....,n-1のn個あります。
それは、ガウス平面の単位円を(1,0)=e^0からスタートしてn等分する複素数だからです。
原始がつくと、どうなるでしょうか。
順次的に、2乗根、3乗根、4乗根という調査によって先に原始n乗根になったものは、
スキップしますよね。
n=素数ならば、円周をn等分する場所は、順次的にそれまでの等分位置とかぶることはありません。
しかし、2乗根と偶数乗根は必ずx=−1、(-1)2=1が根になります。その後の原始の根にはなりません。
3乗根と3の倍数乗根は必ず、x=ω、ω2、ω3=1が根になります。その後の原始の根にはなりません。
nが、n-1以下の数に対して互いに素でないと、原始n乗根になれないのですね。
(一般化)
・1のn乗根はz(n,k)=e2πk/n(k=0,1,....,n-1)のn個ある。
・1の原始n乗根はnとkが互いに素に限るので、ファイ、φ(n)個ある。
・nが素数のとき、1の原始n乗根は(xp-1)/(x-1)=xp-1+....+x+1=0の解すべてだ。
2.円分多項式
<円分拡大>
今度は方程式を多項式にして扱ってみよう。
方程式xn=1ではなく、多項式xn−1だ。
この多項式のQ上の最小分解体Lを考えよう。
L/Qは1の原始n乗根zで生成される単拡大Q(z)になるね。
このQ(z)/Qを円分拡大と名付けよう。
<円分多項式>
さっき学んだように、1のn乗根はn個だけど、原始n乗根はd=φ(n)個だ。
ファイφの大文字Φを使って、1の原始n乗根のd個の根に分解されるd次多項式を円分多項式と呼び、
Φn(x)=(x- z1)(x-z2)...(x-zd)と書くことにしよう。
円分拡大Q(z)/Qのガロア群はn個のn乗根を動かす自己同型写像の群。
n乗根だけでなく、原始n乗根は原始n乗根のままかきまぜるため、
Φn(x)の係数、対称式は保存される。つまり、Φn(x)も保存されるね。
円分多項式Φn(x)はQ上既約になっているから、
円分多項式は、d個の原始n乗根に対応する最小多項式だね。
だから、円分拡大Q(z)/Qの拡大次数はnではなくてdとなるね。
ガロア群Gal(Q(z)/Q)は次数がdだから、nの剰余類群でnと既約なものが作る群(Z/nZ)×と一致するね。
特にnが素数ならば、円分拡大のガロア群の次数はn-1で、拡大次数はn-1だね。
(例)
原始2乗根は、x+1=0の解。x=−1が原始2乗根。φ(2)=1個。円分多項式Φ2(x)=x+1。
原始3乗根は、x2+x+1=0の解。x=(-1±√3i)/2が原始3乗根。φ(3)=2個。円分多項式Φ3(x)=x2+x+1。
原始4乗根は、x2+1=0の解。x= ±i が原始4乗根。 φ(4)=2個。円分多項式Φ4(x)=x2+1。
原始5乗根は、x4+x3+x2+x+1=0の解。φ(5)=4個。円分多項式Φ5(x)=x4+x3+x2+x+1。
原始6乗根は、x2-x+1=0の解。φ(6)=2個。円分多項式Φ6(x)=x2-x+1。
原始7乗根は、x6+x5+x4+x3+x2+x+1=0の解。φ(7)=6個。円分多項式Φ7(x)=x6+x5+x4+x3+x2+x+1。
。。。。。。。
<1の5乗根をべき根で表す>
1の原始5乗根は、φ(5)=5-1=4だから、円分多項式は4次式になる。
1の5乗根をz=eθi (θ=2π/5)、zi=(z)iとするとき、
円分多項式の性質から、剰余系Z5×と同様の法則が成り立つ。
zn=zm ( n≡m (mod 5)のとき、znzm=z(n+m)
円分多項式x4+x3+x2+x+1=0の4解は {z1,z2,z3,z4}とするとき、
ガウス平面での対称性に着目して、α=z1+z4, β=z2+z3とおく。
z1とz2は共役複素数で、和αはz1の実部の2倍で正。
βは同様にしてz2の実部の2倍で負。
α+β=-1、αβ=(z1+z4)(z2+z3)=z3+z4+z6+z7=z3+z4+z1+z2=-1
α、βはt2+t-1=0(補助方程式)の解だから、t=(-1±√5)/2
α=z1+z4=(-1+√5)/2
z1*z4=z5=1だから、解と係数の関係から、
z1,z4はz2-(-1+√5)/2 z + 1=0 (補助方程式)の解で虚部が負だから、
z1= + となるね。
この経験から、z1の実部がべき根で表せたなら、虚部も表せるので、z1の実部がカギだとわかりますね。
質問:√aの作図はどうやればよいでしょうか。
1の長さの線分AOを取ります。AOをOからaの長さだけのばした点をBとします。
直径AOBの半円をかきましょう。Oを通り、ABに垂直な線Lをひきます。
lが半円の弧と交わる点をCとします。COの長さが√aですね。
(理由)
三角形AOCと三角形COBが相似な直角三角形になるので、AO:OC=OC:OB=相似比です。
OC=xとすると、1:x=x:aとなるので、x=√aです。
質問:geogebraで円分多項式の解を視覚化するにはどうしたらよいでしょうか。
正5角形ならば、5は素数だから、1の原始5乗根はφ(5)=5-1=4個あります。
Φ5(x)=x4+x3+x2+x1+1=0 です。
1の5乗根はe^2pi/5 iと入力します。そうするとz1= などと表示されます。
zの添え字をバックスペースで削除すると^も削除されて1を入れるとz1に直せますね。
そして、z1^2、z1^3,z1^4を入力すると、ちゃんと平面上に点がうたれます。
名前を適宜z2,z4,z3などとかえましょう。
正5角形の円分多項式の4頂点の推移サイクルを目でみる
<ガロア理論で1の5乗根を求める>
・ゴール
円分多項式Φ5(x)=x4+x3+x2+x+1=0の4解を {z1,z2,z3,z4}とするとき、
α=z1+z4, β=z2+z3とおくと、α+β=-1、αβ=-1α、βは(補助方程式)の解。
だから、t=(-1±√5)/2となり、α=z1+z4=(-1+√5)/2。
また、z1*z4=z5=1だから、解と係数の関係から、z1,z4は (補助方程式)の解。
だから、z1= + となる。
・スタート
円分多項式x4+x3+x2+x+1=0の4解はX={z1,z2,z3,z4}。
基礎体はF=Q。最小分解体をE=Q(z1,z2,z3,z4)とする。
Eのガロア群Gの位数はφ(5)=4=2*2で、拡大次数は4。G=C4=C2×C2だ。
Gは可解で正規列がG▷C2▷{1}となるね。
(理由と詳細)
一般4次方程式の解の公式を作る場合は、4つの解の序列が不明だったから、4!=24の順列がありうるがガロア群からスタートしたね。
しかし、円分多項式Φ5(x)では、z12=z2, z22=z4, z42=z8=z3, z32=z6=z1となるから、
回転ρを要素の2乗で実装すると、z1→z2→z4→z3のサイクルとなり、すべての要素が登場する。
だから、ρは(1 2 4 3)の巡回置換となり、ρがガロア群の生成元となるね。
解の序列が明確だから、順列は1つめを何にするかの区別しかないので位数は4になる。
だから、ガロア群G=<ρ>={e, ρ,ρ2,ρ3}。Gの正規部分群は、H={e, ρ2}=C2となるね。
・中間体を作る。
|G|/|H|=4/2=2で,G/H=C2={0,1}。
Hの回転ρ2をしても不変な要素を作ろう。
回転ρでz1→z2→z4→z3のサイクルが回るということは、1つおきで、z1→z4組と、z2→z3組に分けられる。だから、α=z1+z4, β=z2+z3を作れば、ρ(α)=α、ρ(β)=βとなる。Hの中間体は2次拡大M=Q(α)。α+β=αβ=-1は上述と同様にして得られる。
解と係数の関係から、α、βは(補助方程式)の解。
だから、t=(-1±√5)/2となり、α=z1+z4=(-1+√5)/2。
z1→z2→z4→z3サイクルは4つのzを正方形のようにイメージすると、4点を2本の対角線として回した。
次は対角線の両端の入れ替えを考えよう。
ρ2(z1)=z4だから、z1とz4はρ2で入れ替わるが、p=z1+z4 ,q=z1z4は対称式なので入れ替わらない。
p,qは不変だからMに属するが、z1,z4は E=Q(z1,z2,z3,z4)に属する。
p=(-1+√5)/2, q= z1z4=z5=1から、z1,z4は の解。
だから、z1= +
つまり、G→H→{e}に対応して、Q→M=Q(α)→E=M(z1)と2次拡大の連続だったね。
3.正n角形が作図できるとき
ガロア理論によると、n次方程式が代数的に解けるのは、ガロア群が可解のときだったね。
作図は円と直線の交点か、円と円の交点で新しく点と長さを決めることだから、2次方程式に還元できる。
ということは、正多角形が作図できるためには、商群の位数が2となり、体が2次拡大の連続になるということだ。
一方で、頂点の数を2倍2倍にしていっても作図はできるし、
2種類の素数p,q頂点の多角形がかけると、pq頂点の多角形も作図できるはずだから、
多角形の頂点数n=2mp1α1p2α2....としよう。
ここで、φ関数の特徴を思い出そう。
素数p,qに対して、φ(p)=p-1, φ(q)=q-1、φ(pb)=pb*(1-1/p)(1-/q)、φ(pm)=pm*(1-1/p)=(p-1)p(m-1)だから、
1の原始n乗根の個数、つまり実質的な次数はφ(n)=(2-1)(p1-1)(p2-1).....2m-1p1α1-1p2α2-1....
となる。これがすべて2のべき乗になるときに限り、正n角形が作図可能になるだろう。
そこから、p1-1=2a, p2-1=2b,p3-1=2c,......
つまり、nの2以外のどの素数もpi=2k+1になる。kが奇数だとpiが素数でなくなる(★)
なので、
pi=2(2^l)+1のように、フェルマー素数となる。
これから、piの例は2の2のべき乗のべき乗+1でnはそれらの積に2のべき乗をかけたものだ。
(例)
2のべき乗は2,4,8,16,...
(2の(2のべき乗)乗+1)は22+1=5, 24+1=17,28+1=257,....
それらの積や2のべき乗倍は5,10,17,20,34,40,68,80,85,160,170,......(角形)は作図可能のはずだ。
(★の理由)
kが奇数の場合
xk+1=(x+1)(xk-1-xk-2+...+1)と因数分解できてるから。
<ガロア理論で1の17乗根を求めよう>
・ゴール
円分多項式x16+.......+x4+x3+x2+x+1=0の16解をX= {z1,z2,z3,z4,z5,.....,z16}とするとき、
z1の実部と虚部をべき根と四則演算だけの数式で表す。
・スタート
円分多項式Φ17(x)=x16+....x4+x3+x2+x+1=0の16解はX={z1,z2,z3,z4}。
基礎体はF=Q。最小分解体をE=Q(z1,z2,z3,z4,.....,z16)とする。
Eのガロア群Gの位数はφ(16)=16=2*2*2*2だからG=C16=C2×C2×C2×C2だ。拡大次数は16だ。
Gは可解で正規列がG=C16▷C8▷C4▷C2▷{1}となるね。
(理由と詳細)
円分多項式Φ5(x)では、z12=z2, z22=z4, z42=z8=z3, z32=z6=z1と回転ρを要素の2乗で実装すると、z1→z2→z4→z3のサイクルとなり、すべての要素が登場したように、回転ρで16要素がすべて登場するサイクルを見つければよいはずだ。
mod17で、2乗の連鎖を作ると、1,2,4,8,16,15,13,9,1すべての要素が登場する前にサイクルは終わる。
mod17で、3乗の連鎖を作る。1,3,9,10,13,5,15,11,16,14,8,7,4,12,2,6すべての要素が登場した。
そこで、回転ρを要素の3乗で実装しよう。
ρ=(1 3 9 10 13 5 15 11 16 14 8 7 4 12 2 6)と巡回置換をガロア群C16の生成元としよう。
正規部分群C8,C4,C2の生成元はρ2,ρ4,ρ8,ρ16={1}にすればよいね。
・中間体を作る。
・最初の2次拡大は、ρ2で1つとばしで2組分けしよう。
α=z1+z9+z13+z15+z16+z8+z4+z2, β=z3+z10+z5+z11+z14+z7+z12+z6
この2式はρ2で不変だから、最初の拡大体はM=Q(α)
α+β=-1。αβは8×8=64項=16×4=-1×4=-4(数値の不規則性からの予想し、検証は略)
t2+t-4=0の解α= 。
(z1+z9+z13+z15+z16+z8+z4+z2, z3+z10+z5+z11+z14+z7+z12+z6)=()
・次の2次拡大はρ4で4つとばしで、αを2組に分けよう。
p=z1+z13+z16+z4, q=z9+z15+z8+z2
この2式はρ4で不変だから、次の拡大体はN=M(p)
p+q=α=、pqは4×4=16項=-1と予測する。
z2-(-1+√17)/2z-1=0の解
p={(-1+√17)/2+√[(-1+√17)/2)2+4]}/2
=(-1+√17)/4+√(1+17-2√17)+16)/4=
(z1+z13+z16+z4,z9+z15+z8+z2, z3+z5+z14+z12,z10+z11+z7+z6)=( )
・次の2次拡大はρ8で4つとばしで、pを2組に分けよう。
r=z1+z16, s=z13+z4
この2式はρ8で不変だから、次の拡大体はO=N(r)
r+s=p=
rs=(z1+z16)(z13+z4)=z14+z5+z29+z20=z14+z5+z12+z3=
t2 -pt +rs=0の解
t=p/2+√(p2-4rs)/2から、途中計算略。
r= =z1+z16
・次の2次拡大はrを2つにする。E=O(z1)
z1+z16=r
z1*z16=z17=z0=1
z1はz2-rz+1=0の解。
ただし、z1とz16は実軸に対して線対称だから、共役複素数。
r=z1+z16は実数であり、r=real(z1)*2。
だから、real(z1)=r/2, |z|=1から、imaginary(z1)も作図可能。
z1の実部=r/2=
つまり、G<ρ>→<ρ2>→<ρ4>→<ρ8>→{e}に対応して、
Q→M=Q()→N=M( )→
O=N( )→E=O(z1)=Q(X)
2次拡大を4回連続するとz1そのものを求めることができたね。
(作図に必要はz1の実部だけなら、3回の拡大で十分ですね。√17の作図と同様の作図を繰り返すことで
正17角形は作図できるはずの式ができたね。実際に作図するかどうかは時間の余裕と根気の問題でしょう。)