同時性も観測者によるのか?
このワークシートはMath by Codeの一部です。
これまで、
光速が一定で最高であることを前提にすると、
光速に近い速さで動くと長さと時間がちぢんで見えるということを学んだ。
象の一部だけから、これは象だと判断することは以外と簡単ではないかもしれない。
同じものを別の視点、角度からみると相当別に見えるからだ。
慣性系は座標系と同じで、
同じ図形を別の座標系で見ると相当別に見える。
座標系を変えると、同時性まで変わってしまい、その結果として
長さと時間がちぢんで見えたりするというお話し。
今回は、これを学ぼう。
光が左と右の壁につく時間がずれる(特殊相対性理論)
1.同時性は慣性系でちがってくる
動く車の中央にAさんがのっている。
それをBさんが外から見ている。
車の速さはV、光の速さはCだ。
光速は慣性系(座標系)にかんけいなく一定だ。
車の中のAさんから見た慣性系Sでは左の壁(Left)と右の壁(Right)には光は同時につく。
車の外のBさんから見た慣性系S'では光が壁につくのは、左が先で、右があとになる。
この2つの現象を矛盾なく説明できる数式を見つけたい。
そのための道具が座標変換だ。
Bさんのいる時空世界の座標系(慣性系)をSとしよう。これは静止した普通の座標系だ。
Aさんのいる時空世界の座標系(慣性系)をS'とする。
これはAさんから見ると当たり前に左右差なく光がつく時空世界だ。
ミンコフスキー空間という有名な空間の設定の常識では、時間軸をたて、空間軸をよこにする。
しかし、いきなり従来のよこが時間T、たてが位置Xという配置とちがいすぎて混乱しやすいので、
ふつうの進行グラフとどうようによこが時間T、たてが空間位置Xとしてかいてみよう。
変数がたくさん出てくるので、当面、
基本的に大文字を使う。小文字は未知数に使うことにする。
同時と非同時が共存する(特殊相対性理論)
<慣性系の座標変換の条件とは>
Bからみた左壁Left、A、右壁Rightは等速VでBから離れていく。
3つの点はNの間隔で離れている。
同時にAから左右に光が走る。
同じ1つの点を、Bの座標系Sで(T,X), Aの座標系S’で(T',X')とかこう。
SからS’に座標変換する行列をR={{a, b}, {c, d}}とする。
つまり、T'=aT + bX , X' = cT + dX
左向きの光がLeftにあたる出来事を点L、右向きの光がRightにあたる出来事を点Rとしよう。
・すると、次の4つが必要な条件になる。
① 2点L,Rは系Sでは同時でなく、系S'では同時だ。数式では、TL'=TR'
② 点Aは系S’では静止している。数式では、T>0なら、XA'=0
③ 光速はどの慣性系でも一定のCだ。数式では、X=CT, X'=CT'
④ 変換RのVをーVに変えた変換はAからみたBの動きでRの逆変換になる。 R*R-1=E
・以上の4つの条件を実装するために、
系SでのL,Rの座標を求めたい。
この段階では、光速Cを特別扱いする必要はないので、方程式でも算数でも交点がだせるね。
車の方程式はLeft,A,Rightの順にX=VT+N, X=VT, X=VT-Nだね
2つの光の方程式は、右むき、左向きの順にX=CT, X=-CTだ。
だから、
R座標は TR = N/(C-V), XR= C *TR
L座標は TL = N/(C+V), XL= -C *TL
さあ、これから、①②③④を使って、未知数a,b,c,dを求めよう。
<座標変換の式を求める>
T' = a T + b X
X' = c T + d X
① LとRはS'では同時な出来事(TL'=TR')
TL' = a TL + b XL= a TL + b(-C*TL)= (a-bC) TL= (a-bC) N/(C+V)
TR'= a TR + b XR= a TR + b(C*TR)= (a+bC)TL= (a+bC) N/(C-V)
だから、 (a-bC) N/(C+V)=(a+bC) N/(C-V)
(a-bC)(C-V)=(a+bC)(C+V) となり、aV+bC2=0つまり、b= (-V/C2) a
② AはS'ではX座標は0(T>0なら、XA'=0)
AはSでは、(T,VT)だから、XA'=c T + d X= c T+ dVT=T(c+dV)=0。
T>0から、c+dV=0つまり、c=-dV
③ 慣性系で光速(X=CT, X'=CT')
XL'は光の軌道にある点だから、
XL'=c T + d X = (-dV) T +d CT=dT(C-V)。また、
XL'=C XT'=C(aT+bX)=C(aT + (-V/C2) a CT)=Ta (C -V) 。したがって、d=a
④ VをーVに入れ替えるとRの逆変換になる(R*R-1=E)
①~③からR={{ a, b},{ c, d }}=a{{ 1 , -V/C2 },{ -V, 1 }} となり、R-1=a{{ 1 , V/C2 },{ V, 1 }}
R*R-1=a2 {{ 1 , -V/C2 },{ -V, 1 }}{{ 1 , V/C2 },{ V, 1 }}={{1,0},{0,1}}
これから、a2(1-(V/C)2)1 V=0のときにX’=Xになるのはa>0だから、
a= 1/a=b= とするとき、 座標変換行列はR=
a,b,c,dの未知数が既知となったので、ここからは、速さa,b,v,cだけ小文字にする。
T' = aT-v/c2 aX =(T-v/c2X)/b
X’ =-vaT +aX =(X- vT)/b
これをローレンツ変換というね。
2.ローレンツ変換の帰結
ローレンツ変換で座標系によって、光速に近く動くと長さ・時間が縮んで見えることが計算で出せる。
それをやってみよう。
a= 1/a=b= とするとき、
系Sから系S’へのローレンツ変換Rは
T' =(T-v/c2X)/b
X’ =(X- vT)/b
系S’から系Sへの逆変換R-1は
T' =(T+v/c2X)/b
X’ =(X+vT)/b
<長さがちぢむ>
系Sに対して系S’が速さvで動く。系S’のX'軸に長さL0=X2'-X1'=ΔX'の棒がある。
この棒を系Sの両端を同時にはかってL=X2-X1=ΔXだったとしよう。
Lは系SではL0の何倍の長さに見えるでしょうか。
変換Rの逆変換は‐vを+vにすればよいから
S系の同時刻T=(T1'+v/c2X1')/b=(T2'+v/c2X2')/b 。両辺の差からΔT'= -v/c2ΔX'
S系の位置は、X2=(X2'+vT2')/b、X1=(X1'+vT1')/b。
辺々の差 L=ΔX=(ΔX'+vΔT')/b=(ΔX'+v{ -v/c2ΔX'})/b=ΔX'(1 -v2/c2)/b=ΔX'b2/b=b L0≦L0
(例)
ピタゴラスの定理で、斜辺を1残りの辺をu,vとしたときにu/c=√(1-(v/c)2)で、3:4:5を使うと、v/c=4/5なら、b=u/c=3/5なので、LはL0の3/5=60%に縮む。
だから、時速24㎞という光速の4/5倍で進むと、40㎞のトンネルは24㎞に縮む。
前回と同じ結果になったね。
<時間がちぢむ>
系Sに対して系S'が速さVで動く。系S,系S'の両方の原点に正確な時計をおく。
さらに、系S'の位置x’に振り子時計を固定しておき、周期L0=T2'-T1'=ΔT’だった。
この振り子を系Sで観測して1周期の開始と終了をT1,T2として、周期L=T2-T1=ΔTだったとしよう。
T2=(T2'+v/c2X')/b、T1=(T1'+v/c2X')/b。
両端の差からL=T2-T1=(T2'-T1')/b=L0/b≧L0
系Sから見ると系S'の周期が大きくなる。
系Sに対して動いている系S'では、時間がゆっくりすすみ、時間が遅れる。
動く系の固定された時計の時間を固有時ということがある。
(例)
ピタゴラスの定理で斜辺を1残りの辺をu,vとしたときにu/c=√(1-(v/c)2)で、3:4:5を使うと、
v/c=4/5なら、b=u/c=3/5なので、周期LはL0の1/(3/5)=5/3に伸びるから、
時間の進みは3/5=60%に縮む。地上の50年はロケットで30年ということだ。
これも前回と同じ結果だ。
3.ミンコフスキー空間のロンレンツ変換で不変な量をさぐる
アインシュタインの先生だったミンコフスキーの数学理論は
アインシュタインは最初はあまり重要視していなかったらしいが、
一般相対性理論を考えるころには、「ユークリッド空間と似ている」と書いているほど
その共通点を理解していたようだ。
さて、
静止した慣性系Sに対して、光速に近い速さvで動く慣性系S'では
a= 1/a=b= とするとき、 座標変換行列がR=
T' =(T-v/c2X)/b
X’ =(X- vT)/b
ということがわかった。
・R座標は TR = N/(C-V), XR= C *TR
L座標は TL = N/(C+V), XL= -C *TL
RLの傾きm=(XR-XL)/(TR-TL)=C(TR+TL)/(TR-TL)
= C{N/(C-V)+ N/(C+V)}/C{N/(C-V)- N/(C+V)}=C2/V
S系の横軸をt軸、たて軸をxとしたときのS'系のx軸の傾き。Aの傾きはv。
S系のよこ軸をx軸、たて軸をtとしたとき
S'系のtに対してx軸の傾きはv/C2、t軸の傾きは1/v
時間軸を空間の次元xと量の次元をそろえるために縦軸ctとする。
すると、S'系のctに対してx軸の傾きはv/C2 c=v/cだね。
これを複素平面を利用して、とらえなおしてみよう。
<ユークリッド距離空間>
実数を要素として、標準基底ベクトルをe1,e2={1,0},{0,1}とし、
位置ベクトルx={x,y}の原点Oからのユークリッド距離d=sqrt(x2+y2)
を距離とするユークリッド距離空間E2では、回転変換Rが距離を不変にする行列だった。
cos2θ+sin2θ=1は円の方程式であり、
座標軸をパラメータθで回転する変換はR(θ)={{cosθ, sinθ},{-sinθ, cosθ}}と表すことができたね。
回転はユークリッド空間では合同変換の典型だ。
<ミンコフスキー距離空間>
時間を虚軸Y(ict), 空間を1次元の実数軸X(x)、標準基底ベクトルをe1,e2={1,0},{0,1}とし、
y=ictとおくと、位置ベクトルx={x, y}の原点Oからの
ミンコフスキー距離d=sqrt(x2+y2)=sqrt(x2-(ct)2)を距離と決めることができる。
なんと、形式的にはミンコフスキー距離はユークリッド距離と同じにかける。
代入すると、2次元平面の双曲線を表す。
そして、時間と空間の対等性が見えてくる。
原点から距離0の点は、sqrt(x2-(ct)2)=0とすると、x=±ct から、光の方程式だ。
原点から距離1の点は、sqrt(x2-(ct)2)=1 とすると、x2-T2=1から、光を漸近線とする双曲線になる。
...............
原点から距離kの点は、sqrt(x2-(ct)2)=kとすると、x2-T2=k2から、光を漸近線とする双曲線になる。
・yを使えば、ミンコフスキー距離は、ユークリッド距離と同じ式になるから
オイラー等式eiθ=cosθ+i sinθ、e-iθ=cosθ- i sinθから、
cosθ=(eiθ+e-iθ)/2、sinθ=(eiθ-e-iθ)/2iだから、
cos(iθ)=(eθ+e-θ)/2=cosh θ、sin(iθ)=(e-θ-eθ)/2i = i sinh θと双曲線関数におきかえられる。
(双曲線coshθはy=θ2+1に近く、sinhθはy=θに近い曲線。tanhθはtan-1に近く絶対値1未満。)
なので、
座標軸をパラメータiθで回転する変換はR(iθ)={{cos(iθ), sin(iθ)},{-sin(iθ), cos(iθ)}}
これは回転だから、ミンコフスキー距離d=sqrt(x2+y2)=sqrt(x2-(ct)2)を不変にしているね。
・(x,y)={x、ict}を(x',y')={x', i ct'}に変換するとしたら、
{x', ict'}={x coshθ+ict i sinhθ, -x i sinh(θ)+ ict coshθ}
{x', ct'}={x coshθ - ct sinh θ , -x sinh θ+ ct coshθ}
S'系のct軸に対するx軸の傾きはv/cだったから、
sinhθ/coshθ=tanhθ=v/cとおける。
光速の直線x=ctの傾きは1だね。
・1-tanh2θ=1/cosh2θから、coshθ=a, sinhθ=a v/cとなる。
{x', ct'}={x a - ct a v/c , -x av/c+ ct a}
=a{x - t v , ct - x v/c}
{x', t'} =a{x - t v , t - v/c2 x}
これで、ミンコフスキー空間の回転はローレンツ変換と同じになったね。